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2020年代後半、世界は原因不明の奇病「縮小病」の出現によって静かに、だが確実に変貌した。この病気は、ある日突然、10代後半から20代後半の男性の体を襲い、彼らの身長をわずか5センチメートルにまで縮めてしまう。発症のメカニズムは科学者すら解明できず、ウイルス説、遺伝子変異説、環境汚染説が飛び交うが、どれも確証には至らない。発症者は一晩にして肉体が縮み、目覚めた時には巨大なベッドの上で呆然と立ち尽くすことになる。筋肉や骨格、内臓までもが完璧に縮小され、声すら小さな甲高い音に変わるが、人間としての知性と感情はそのまま残される。それが、この病の最も残酷な点だった。
縮小病は当初、医療界や社会福祉の課題として扱われた。政府は患者を保護する施設を設立し、彼らを「通常の生活」に戻すための研究を進めた。しかし、縮小した体はあまりにも脆弱で、通常の人間社会での生活は不可能だった。5センチの体は、ちょっとした風で吹き飛び、通行人に踏まれれば即座に命を落とす。医療費は膨大で、患者の数は増える一方。やがて、社会は彼らを見捨て始めた。保護施設は予算不足で閉鎖され、縮小病患者は家族や友人からも疎まれる存在へと変わっていった。誰かが言った。「あいつらは人間じゃない。ただの虫だ」と。
だが、この病が単なる悲劇で終わることはなかった。縮小病患者が社会の底辺に追いやられるにつれ、彼らを「利用」する新たな闇が広がり始めた。20代から40代の男性――性欲が強く、屈強な肉体を持つ者たちが、縮小した人間に異常な興奮を覚えるようになったのだ。5センチの小さな体を掌に載せ、その無力さを眺めることに快感を見出し、彼らを性的に搾取する文化が地下で花開いた。最初は個人の歪んだ欲望だったものが、やがて組織的な「市場」に発展するまで、そう時間はかからなかった。
この闇市場は、都市の裏路地やネットの暗部で蠢いている。縮小病患者は「商品」として取引され、ブローカーたちは彼らを捕獲し、密かに顧客に売りつける。顧客は一見すると普通の男たちだ。建設現場で汗を流す屈強な労働者、洗練されたスーツを着たビジネスマン、ジムで鍛え上げた体を誇るトレーナー。だが、彼らの内面は悍ましい欲望に支配されている。小さな人間を手に持ち、その命を握り潰すほどの力を感じながら、性的な満足を得るのだ。市場では、患者一人につき数万円から数十万円の値がつけられ、状態や若さ、顔立ちによって価格が変動する。時には「特別な注文」が入り、顧客の嗜好に合わせて患者が選ばれることもある。
縮小病患者にとって、この世界は絶望の牢獄だ。巨大な人間の手は、彼らにとって空を覆う雲のように圧倒的で、逃げ場はない。革靴の足音が近づくたび、心臓が縮こまり、汗と埃にまみれた指が自分を掴む瞬間、恐怖は頂点に達する。彼らは叫ぶが、その声は誰にも届かない。闇市場の顧客にとって、彼らは玩具であり、使い捨ての道具だ。性的搾取の果てに命を落とす患者も少なくない。ある者は踏み潰され、ある者は飲み込まれ、ある者は単に「飽きられた」末にゴミ箱に捨てられる。市場のブローカーたちは、そんな結末を冷淡に見つめ、次の商品を探しに動き出す。
この物語は、そんな世界に生きる縮小病患者と、彼らを取り巻く欲望の渦に焦点を当てる。19歳で発症し、闇市場に売られた青年・タカシの視点から見た巨大な人間たちの恐怖。患者を捕獲し、冷酷に売りさばくブローカー・ケンジの暗い日常。そして、一見魅力的な外見を持ちながら、小人への欲望を抑えきれず残虐な行為に手を染める顧客・リョウの内面。これらの人物が交錯する中、縮小病がもたらした社会の歪みと、人間の本性が剥き出しになる瞬間が描かれる。希望は遠く、救いはない。あるのはただ、欲望と絶望が絡み合う暗い現実だけだ。
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