第六章:因果応報
リョウは闇市場で顔が知られる存在だった。ほぼ毎晩裏路地に現れ、爽やかな笑顔でブローカーと交渉する姿は、市場でも際立っていた。175センチの筋肉質な体、タンクトップから覗く頼りがいのある肩、穏やかな物腰――そんな彼が小人を求めて通う姿に、ブローカーたちは冷ややかな視線を向けつつ、金になる客として重宝していた。ケンジもその一人だ。「お前、また来たのか。いいペースだな」と冷たく笑うが、リョウはいつものように返す。「仕事が忙しくてさ。癒しが欲しいんだよ」 その夜、彼は市場に足を運んだ。だが、それが最後の夜になるとは、知る由もなかった。
市場の倉庫で、リョウはケンジと交渉を始める。「今日もいい子揃えてる?」 軽快な声で檻を覗き込み、5センチの患者たちを値踏みする。「この子、頑丈そうだな。いくら?」 ケンジが「12万だ」と答えると、リョウは財布を取り出し、「お前、いつも助かるよ」と笑う。だが、その瞬間、異変が襲った。体が熱くなり、手が震え、視界が揺れる。「ん? ちょっと調子悪いかな」 呟いた瞬間、体の感覚が急速に縮む。目の前でケンジが巨人になっていく。182センチの体が膨張するように天へ伸び、筋肉質な腕が太い柱のようになる。冷たい目が巨大化し、リョウを見下ろす。服がぶかぶかになり、床が近づく。ケンジの足が28センチの巨塊に変わり、埃っぽい床が果てしない荒野に広がる。リョウは縮小病を発症していた。
「何だこれ…?」 リョウの声が小さくなり、5センチの体が床に転がる。ケンジのブーツがズシン…と床を叩き、衝撃でリョウが跳ねる。巨人の吐息が熱風となり、汗と埃の臭いが襲う。ケンジが屈み込むと、顔が空を覆う。目がリョウの体より大きく、唇が動くたび、低い声が雷のように轟く。「お前…縮小したのか?」 リョウは這って逃げようとするが、ケンジの足が近づく。ズシン…ズシン…。一歩ごとに地面が震え、リョウの体が転がる。市場で発症してしまった。最悪の場所で、最悪のタイミングだ。
ケンジが楽しそうに追いかける。「おい、リョウ、どこ行くんだ?」 巨大な足がリョウを追う。床に叩きつけるたび、衝撃波がリョウを吹き飛ばす。ケンジの指がそっと床を這い、逃げるリョウを囲む。「お前、いつも患者弄んでたよな。今度はお前が弄ばれる番だ。因果応報ってやつだよ」 冷たい笑い声が頭上から降り注ぐ。リョウが檻の陰に隠れようと這うと、ケンジの足がそっと近づき、道を塞ぐ。「逃げても無駄だぜ。お前が小人になったなんて、願ってもねえ状況だ。俺、楽しすぎてたまんねえよ」 巨人の声に喜びが滲む。
リョウは這いながら思い返す。自分が患者にやってきたこと――掌で弄び、胸で圧迫し、舌で舐め殺した日々。それが今、自分に降りかかる。ケンジの巨大な足が迫るたび、少年の窒息死、青年の圧死が脳裏をよぎる。「俺が…俺がしてきたことが…これから俺に…!」 恐怖が喉を締めつけ、リョウは叫ぶ。「い、いやだ! 助けてくれ!」 だが、声は小さすぎて、ケンジの低い笑い声にかき消される。ズシン…。足が近づき、リョウが転がる。「お前が患者に言わせていた言葉だろ? いい響きだな!」 ケンジが楽しそうに浴びせる言葉が、頭上で響き渡る。
力尽きたリョウを、ケンジの巨大な手が摘まみ上げる。「お前、ずっと見ていて思ってたよ。小人になれば上玉だってな」 掌が空を覆い、汗と熱がリョウを包む。ケンジの冷たい目が値踏みする。「顔も体もいいし、頑丈そうだ。20万、いや、30万は取れるぜ」 リョウの体が震え、絶望が心を飲み込む。だが、ケンジの瞳がさらに輝く。「いや…市場に流すのも勿体ねえな。お前、俺が目を付けていたんだ。ルール破ってでも、俺の楽しみに使いたいぜ」 興奮が抑えきれず、ケンジの息が荒くなる。「お前みたいな上玉、弄びがいがあってたまんねえよ」 リョウはもがくが、巨人の掌で抵抗は無意味だ。
エピローグ:終わらない闇
リョウはケンジの部屋に連れ込まれた。5センチの小さな体が、薄暗い部屋の床に投げ出される。かつて爽やかだった営業マンの面影は消え、恐怖に歪んだ顔が震えるだけだ。部屋の中央に立つケンジが服を脱ぎ捨て、全裸になる。182センチの筋肉質な体が暗闇に浮かび、汗と熱気が部屋を満たす。ケンジの手がリョウを摘まみ上げ、巨大な掌に載せる。指が小さな体を揉み、包容力とは程遠い力で締めつける。「お前、上玉だな。弄びがいがあるぜ」 低い声が響き、リョウの耳を圧迫する。彼は怯え、震えながら掌の中で縮こまるしかない。
視界の下、床には大量の小人がばらまかれていた。数十匹の縮小病患者が這い、逃げ惑う。だが、動かない者も多い。ケンジが欲求を爆発させた残骸だ。潰れた体、ちぎれた手足、血と汗にまみれた跡――それらが床に散乱し、生きている者たちの間に点在する。ケンジはリョウを握ったまま、別の患者を指で摘まむ。「なぁ、リョウ、見てろよ。お前が好きだった遊びだろ?」 穏やかな笑みを浮かべ、患者を胸に押しつけ、筋肉の動きで圧迫する。ぺしゃっと音が響き、患者が潰れる。「お前、こうやって癒されていたよな。俺も楽しんでるぜ」 リョウの視界に、その最期の表情が焼き付く。怯えた目、開いた口、無力な抵抗。
ケンジは次々と消費する。「ほら、次はこれだ」 別の患者を足の指で挟み、軽く締める。軋む音が響き、患者が動かなくなる。「お前、足で弄ぶの好きだったよな。気持ちいいだろ?」 さらに別の患者を口に近づけ、舌でなぶるように舐める。唾液に溺れ、窒息する患者の最期を、リョウに見せつける。「お前、舐め殺すの最高って言ってたよな。俺も共感するぜ」 一人一人の表情が、リョウの記憶に刻まれる。恐怖に歪む顔、助けを求める目、息絶える瞬間――すべてがリョウ自身が患者に与えてきたものだ。ケンジは楽しそうに笑う。「なぁ、リョウ、お前なら俺の興奮、分かってくれるよな?」
リョウはケンジの握りこぶしの中で震える。指に揉まれ、優しく弄ばれながら、目の前の凄惨な営みに目を背けられない。タカシが巨人の掌で弄ばれ、ケンジが欲望を爆発させ、リョウが癒しと称して患者を壊してきたこの世界――その闇が、今、リョウを飲み込む。ケンジの手が別の患者を摘まみ、床に叩きつける。ズシン…と響く音と、飛び散る残骸。「お前、こういうのも好きだったろ? 俺もたまんねえよ」 リョウの小さな体が震え、叫び声すら出せない。死ぬことも許されず、彼はケンジの特別な上玉として、この地獄を見続ける運命だ。
ケンジがリョウを顔に近づける。「なぁ、リョウ、お前、俺の楽しみに共感してくれるよな?」 巨大な舌がベロリとリョウを舐める。熱と唾液が小さな体を包み、息が詰まりそうになる。ケンジの瞳が狂喜に輝き、リョウを見つめる。「お前、最高の玩具だ。市場に出さなくて正解だったぜ」 リョウの視界は、ケンジの欲望と、床に散らばる患者の残骸で埋め尽くされる。この世界の闇は途切れない。タカシが巨人に消費され、ケンジが市場を回し、リョウが癒しを求めた果てに、縮小病患者は弄ばれ続ける。リョウはケンジの掌で震えながら、終わらない悪夢に閉じ込められた。この闇に終わりはない。ただ、巨人の笑い声と、小さな命の軋む音が、永遠に響き続けるだけだ。
