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「………で?次はどこを押せばいいんでぇ…?」
ずずず…っ
と、軋んだ音を立てながら、タツヒコはトラックよりでかく分厚い掌を持ち上げて、眉間に皺の寄った顔に当てる。
ヨシキチは苦笑いしながら、大木の様に太いタツヒコの指の間を抜け、巨大な巨人用のキーボートによじ登ると、
「ここっす!ここ!」
とぴょこぴょこと手を挙げた。
ここはタツヒコとヨシキチの務める工務店の倉庫だ。
タツヒコが身を屈めればどうにか入れる背の高い倉庫に、タツヒコ専用の机があり、その足下にはトラックやユニック車が数台泊めてある。奥にはショベルカーや営業用の車があり、壁際にはトラックやショベルカーを数台まとめて掬えてしまいそうなタツヒコ専用のスコップやツルハシ、人間を100人は運べてしまうような、ダムサイズの一輪車が置いてある。
側から見たら、まるで作業道具の前にオモチャのトラックやショベルカーが置いてあるかのようだ。実際、タツヒコのヘルメットが床に転がっているがその大きさが車より大きいのだ。
今日の作業で使用していたタオルや軍手が天井に干してあり、デスクの前に、巨体を屈める様にタツヒコが座っている。
タツヒコにとっては子供の作った秘密基地のようなこの倉庫にタツヒコのデスクが置いてあるのだ。机の上のは乱雑に次の工事の予定書や予算書が散乱し、灰皿には山のような電柱サイズのタバコが文字通り山積みになっている。
シアターサイズのPCをタツヒコが睨みつけている。彫りが深くワイルドなラウンド髭に、ガッチリとした体格、巨人の中でも上背のある大柄なタツヒコ。
そのタツヒコがなぜモニターを睨みつけているかといえば、先日おやっさんこと社長にとある現場の予算作成を命じられたからだ。
ならば、といつも使っているペンと電卓を掴んだ瞬間。「タツ!おめぇもいい加減にパソコンで予定書作らんか!だいたいお前の予定書をPCに入力するだけでも俺たちには重労働なんだから、今回からは全部パソコンでやれ!」
タツヒコ「…ぐぎぎ…クソォ、あぁ、つぎゃどうすりゃいいんだよ…!
えーっと、『撤去(巨人工による)』
…t…e…k………yどこだ…o…..
カッコ…カッコて…ど…どこだよ…」
タツヒコは半分涙声になりながら、くわえタバコを噛みしめる。
ヨシキチ「ま、まぁまぁタツさん、落ち着いて…」
ヨシキチは苦笑いを浮かべる。
ヨシキチは今年からここで働き出した若い人間だ。
優しいしユーモアもあるタツヒコにすっかり懐き、タツヒコも気を許したのかとても仲が良い。
少しおヤンチャしていた事もあるヨシキチだったが、今ではとても頼りになるタツヒコを、密かに心の中で兄貴と読んで慕っている。しかし、キーボードで文字さえ撃てないとは。
歳の割にフレンドリーで気の若いタツヒコにもこんな弱点があったのか。
と、思う一方で、前に先輩から聞いた話を思い出した。タツヒコさん達のような、景気の良い頃に職人になった巨人さん達は若い頃なんかは殆ど重機扱いで力仕事や解体をメインにさせられていたそうだ。
もちろん巨人達の最大の強みといえば、その機械をも上回る強靭なパワーと人間等とは比べ物にならない労力源だ。しかし、おやっさんはそれだけではタツヒコに申し訳がたたねぇ。
ただでさえ、俺たちとやるのにストレスも感じるかもしれねぇ。と、そんな扱いはしたくなくてあえてタツヒコ達に人間とおなじ業務をさせているのだと。ただ、今この工務店には巨人はタツヒコだけだし、その当本人が機械が大の苦手で今時スマホも持っていないという有様なので、おやっさんこと社長のただの取り越し苦労かもしれないが。
ヨシキチがローマ字の表と次に撃つ単語を照らし合わせて苦い顔しているタツヒコを見上げてふふ、と笑ってしまう。
タツヒコの両腕の間にちょこんと座っていると、手持ち無沙汰な左腕(ブラインドタッチはもちろん、両手でキーボードの入力も出来ない)がヨシキチの背後にずしんと置かれた。あれ、と上を向けばタツヒコの巨大な指がヨシキチの頭をわっしわっしと撫で始める。
ちょうど中指と薬指と小指を背もたれに、親指でヨシキチを優しく包んで、ささくれ立った日に焼けた指でヨシキチの頭を撫で付けている。ヨシキチ「も、もぅ!タツさん!!俺ガキじゃねぇっすよ!!」
ヨシキチが年相応に頬を膨らませて抗議すると、タツヒコは指を離した。
タツヒコ「お?おぉすまねぇな。なんか見てたら可愛くてよ。つい、な。」
ヨシキチ「タツさんの指に囲まれてると確かに安心しますけどね…温かいし。」
そんなこんなでタツヒコの左手に寄りかかりながらキーボードの入力を教えているヨシキチだったが、いつの間にかタツヒコの大きな掌の上でくぅくぅと寝息を起て始めてしまった。
タツヒコ「…お?ったく、しょうがねぇな…」
タツヒコはふっと笑うと、ヨシキチを軽く握ってやった。
ヨシキチは気持ち良さそうに指に摩り付いてくる。タツヒコはどうにか入力を終わらせるとPCを落とし…それにもえらく時間がかかったが、頭をぶつけない様に腰を引いて立ち上がった。
倉庫のシャッターをしめ、倉庫の横の事務所を見下ろした。もう明かりは付いてない。
タツヒコは自分のブーツほどの大きさの建物が暗いことを確認すると、そのままヨシキチを握って歩いて行った。ヨシキチのお母さんが目を白黒させながらお礼を言っているのと、寝ぼけてまだ指にしがみついてくるヨシキチを家まで送り届ける。
自分の足ほどの大きさの家が建ち並ぶ、タツヒコから見れば背の低い草原の様な街を見下ろして、なるべく地響きを起てない様にそーっと歩いた。自分の家に着いた時にはもう何もする気にはなれず、とりあえず風呂を浴び、冷蔵庫からビール缶を数本出した。
適当に数本を飲み干した頃、うとうとっとしてきてタツヒコは布団に潜り込んだ。明日は休日。
久々にゆっくり寝るか、とタツヒコは目を閉じた。
ばちっと電気を消すと年相応の豪快ないびきを搔き出した。おやっさん「よろこべタツ!!この街全部の再開発がとれたぞ!!」
タツヒコの目の前に広がる無人の街。
それはタツヒコの目線のはるか先まで長く続き、タツヒコの後ろにはおやっさんやヨシキチ、レイ、巨人のタスク、タクマやタクト、ソウタ、キョウイチまでが並んでいる。タツヒコ「ほ、本当っすかおやっさん!…よぉっし、まずは一踏み…」
タツヒコは抑え難いと言った雰囲気で巨大なブーツを、まずは足の前にあった高架道路に翳した。
高架道路に巨大な影が映ったかと思うと、無人のアスファルトの橋に黒いブーツが踏み出された!ずがぁぁぁぁん!
タツヒコの巨大なブーツは爆音を立ててアスファルトを粉々に砕いた。
タツヒコの足元が途端に陥没し、周辺の橋はシーソーのように持ち上げられる。そしてそのままバランスを崩してタツヒコの足元に降り注いだ。
足はそのままに、タツヒコの逆のブーツは掬い上げるように崩れていない高架に襲いかかる。タツヒコは楽しそうに息を込め、高架道路を蹴り上げる。
ずどどどどどおおおおお!!!
爆音が響くと、タツヒコのラウンドの髭までコンクリートの塊と割り箸のような大きさの街灯が蹴り飛ばされて宙に舞う。
高架道路沿いに植えられた植栽もなす術なく吹き飛び、タツヒコに蹴り上げられたコンクリート塊が街に降り注いでいく。
タツヒコの蹴り上げた延長線上に吹き飛ばされた高架道路の成れの果ての餌食になって倒壊したビルが並んでいる。タツヒコは調子をあげ、また一歩、踏み込んだ。
今度は四股を踏むように、なるべく地面と水平に足を街に叩きつけて行く。
瞬時に足の下にあったコンビニとビルが踏みつぶされ、駐車されていたミニカーサイズの車がひっくり返り、途端にタツヒコが踏み割ったアスファルトの地割れに落ちて行く。そしてそのままブーツを横に薙ぎ払うと、となりのビルをの壁面を破壊し、巨大な砂煙を上げてブーツの上に倒れてくるがタツヒコには少しも重さを感じない。
すでにタツヒコの体重によって引き起こされる地震によって周辺のビルも傾き、崩れ、どうにかその原形をとどめながら地上に倒れ込んでいる。
タツヒコは何とか原形をとどめていたビルの真上に、巨大なブーツを翳す。体重を載せブーツを踏み下ろすと、爆音を起てて倒れたビルの一軍は一瞬でブーツの底に消えていく。
タツヒコは楽しそうにビルや家々を薙ぎ払って行く。
普段の彼と同じく、温厚そうな面持ちのままでまるで草原を払いながら歩いているようだ。タツヒコ(…あれ、なんかおかしくないか?)
そう思った瞬間だった。
目の前に、何か巨大な黒い物が現れた。なんと言うかゴムの様な皮の様な、曲線を描く黒光りするそれは、タツヒコより遥かに巨大で、
よく見れば足の下の多くの建物を踏み潰してたっているようだ。タツヒコはその見覚えのあるそれに、若干冷や汗をかく。
しばらくは迷っていたが、おそるおそる顔を上げる。
うっすらコレが夢の中だと気づきつつ、顔を上げたそこにはリク「何をしているんだ、タツ!!!!」
雲を纏い、相変わらずおっかない顔をしたリクの、超超巨大化した姿があった。
目の前の物は、リクの巨大なブーツ。
底から伸びる日本の迷彩柄のパンツに包まれた巨大な柱は、後ろの街をすっぽりと陰に隠してしまう大きさだった。
その巨大な足のさらに上で腰回りあたりには入道雲がかかっている。
年齢の割に引き締まった身体を持つタツヒコでさえ、多少腹が緩んでいるというのに、いまでも、いやすでに学生時代を凌駕した肉体を持つ上半身。入道雲すら追い越した顔の辺りには、かすんでいても怒りの表情がありあり見て取れる。
そう、タツヒコの高校時代の悪友にして同会生、自衛隊に所属するリクだ。
そのリクがまるで自分が人間になったかの様に、ギガサイズリクが怒りの表情でこっちを見ている。タツヒコ(…なんちゅうこってぇ…)
ヨシキチ「…タツさん、寝てっかな…?」
ヨシキチはタツヒコのアパートの人間様のドアの前にたった。
人間様のブザーをならしても一向に反応がない。せっかく、朝から酒飲むくらいならどっかに遊びに連れてって下さい!と誘いにきたのに…
と、
そのとき。「この大馬鹿ものぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
ヨシキチ「!!!!????」
キョウイチ「…」
キョウイチは朝食前のランニングを終え、台所で朝食の支度をしようとしていた。
ランニング前にはパンツの中に入るだの乳首に絆創膏で貼付けろだのキョウイチが思いつきもしない事を言って困らせた愛しい恋人、レイ。
あんまりに騒ぐので、とりあえず摘まみ上げてレイがベッド代わりにしてるキョウイチの古い靴の中に放り込み、干してあったキョウイチのハンカチを
入り口に押し込んでさっさと家を出た。口喧嘩や泣き脅しに出られたらキョウイチはレイに叶わない。
しかし、本当にパンツやら乳首やらにレイを貼付けていては危ないし汚いし、何より目立つ。
巨人は雰囲気でどこに人間がいるか分かる。
パンツの中に入れてるなんてバレたらヘタすりゃ逮捕。軽くてもケイゴは一生口をきいてくれなくなるだろう。で、帰ってきてみればハンカチは押しのけられ、スリッパの中で今か今かと身を顰めているレイ。
キョウイチは若干の頭痛を覚えつつ、レイのリクエストに乗ってやる事にした。
キョウイチ「…あれ、虫がいねぇな。どこ行っちまったかな?」
キョウイチはそう、レイに教えられた通りいいながら、スリッパを極力優しく踏みつけた。
足の下でキョウイチの体重をずしりと感じたレイがぴくんと可愛く動く。キョウイチは少しの間レイを踏みつけながらトーストとプロテイン入りのミルクを用意した。
たまに体勢を変えてやったり、土踏まずで踏んでやったり。
嫌な予感がしたので、先に足だけ洗っておいてよかった。このあとにレイに、
「何で足を洗っちゃうのさー!ご主人様の足を掃除するのは奴隷の役目でしょー?」
と、キョウイチの理解の範疇を超えた変態的な抗議を喰らってもだ。
可愛い恋人に汚い足等さらせようか。ここら辺がラブラブな2人の間に未だに超えがたい壁である。キョウイチ(人間って皆こんなもんなのか…?)
即座に頭の中でテルアキとその恋人のナオから「「そんなわけないでしょ!!」」とのツッコミが聞こえてくる。
朝食の支度を終えて、キョウイチは器用に足の指でレイを摘まみ上げた。
レイ「わ、わ、わ」
レイが素直に驚いてもがいている。
こういう所が可愛い。キョウイチは掌でレイを受け取り、皿の上にちょこんと置いてやった。
最初こそびっくりしていたレイだったが、きっとキョウイチの顔をにらみ、レイ「何で足を洗っちゃうのさー!ご主人様の足を掃除するのは奴隷の役目でしょー?」
とまぁ、予想通りの事をいってのける。
「よぉちび。ちゃんとご主人様の帰りを待ってたんだな。えらいえらい。」
…と、指先でレイの頭を撫でながら切り返せたらレイはころっと落ち着くだろう。
しかし、純朴なキョウイチにそんな事が言える筈も無く。キョウイチ「ば、馬鹿。今ランニングしてきたんだぞ、き、汚いだろ?」
と返す。
キョウイチは皿の上にレイを載せたまま、机の上に皿を並べた。レイ「…キョウイチのその運動着、かっこいーなーぁ」
レイがほれぼれする様に行った。
スポーツブランドのぴっちりしたTシャツに、おなじブランドのパーカーと膝までのハーフパンツ。
レイとショッピングに行った時に買った物だ。キョウイチ「本当か?ありがとな。」
キョウイチ強面の顔に笑みを浮かべた。
皿の上を良く見れば、器用にレイの朝食も作ってある。
キョウイチからしたら指先サイズの人間様の冷凍物のトレーを解凍してくれたのだ。レイ「あ、僕の御飯もある!ねーねー、このやり方ってまるでペットの餌みたいだよねぇ。」
キョウイチ「し、しかたないだろ、こうじゃなきゃ俺じゃお前の飯を作れねぇよ…」
レイ「えー僕はキョウイチの食べ残しでいーのにー」
キョウイチ「ほら、アホ行ってねぇでさっさと喰うぞ。」
レイ「はーい。」
キョウイチ、レイ「いっただっきm」
てるるるるるるる!てるるるるるるる!
そこで、レイの携帯電話がなった。
着信先は「ヨシキチくん」
レイの務める居酒屋の常連の若い人間で、人懐っこい人柄からレイを年の近い兄のように慕ってくれる職人の男の子。
ついで言うと、レイより背が高いし職人なんで身体もそれなりに筋肉質でレイも密かに美味しい思いをしているわけだが。レイはなんだろうと思い、電話をとった
レイ「あ、おはよーよしk」
ヨシキチ「レイさーーーーーん!!!!大変っす、大変!!!キョウイチさんと一緒に着てほし一っすーーーーーーー!!!!!」
キョウイチ、レイ「…はい?」
キョウイチ、レイ「「…はぁ…」」
キョウイチは頭が痛そうに目頭を押さえ、レイが呆れかえってオロオロしてるヨシキチを尻目にキョウイチの掌の上にふて寝した。
リク「ごらぁぁ!!!健康の為にビールは控えると約束しただろうがぁぁぁ!!
あとなんだこのほつれたボタンは!すぐに俺のところにもってこいといっているだろうがぁぁぁ!!」タツヒコ「いてぇいてぇいてぇいてぇ!!!!!!!この筋肉馬鹿!!自衛隊員が善良な市民を痛ぶるなこのタコ!!」
リク「なんだとこらぁぁぁ!!」
呆れ返るキョウイチ達を尻目に、いい歳のおっさん2人が部屋の中で思いっきり喧嘩していた。
リクが技をかけたかと思えば、タツヒコが素早く振りほどいてリクに技を仕掛け返す。
リクが背中をとってタツヒコの脚を逆エビにしたかと思えば、真っ赤になって耐えたタツヒコがリクの脇腹に膝を叩き込みリクを逸らす。巨人の中でも特にでかい2人のとっくみあいはヨシキチが慌てるほどには迫力があった。
もうもうとほこりを立てながら建物を揺らし、巨人の中でも特にでかいおっさん2人はキョウイチに全く気づかずに取っ組みあいを続ける。
キョウイチは正直かかわり合いになりたくはないが、来てしまった物はしょうがない。キョウイチ「…そろそろ気づいて頂いてもいいですか、リクさん。キョウイチさん。」
キョウイチ・リク「「………はい?」」
ヨシキチ「もー、タツさん心配したんですからねー!!!」
タツヒコ「わかったわかった…すまねぇなヨシキチ」
タツヒコは掌の上にヨシキチを載せて、指でわめくヨシキチをなでなでと撫でてやる。
ヨシキチはタツヒコの巨大な指を両手でぽかぽかと殴っていた。レイ「ふわー、タツヒコさんすっごい身体ですねぇ…」
レイはちゃぶ台の上でタツヒコの上半身をまじまじと見上げた。
寝起きをいきなりリクに締め上げられたタツヒコは寝起きのまんまの格好だったのでパンツ一丁のまんまだった。
少しふっくらとはしているものの、タツヒコの腕は太く、筋を主張していた。作業で焼けた真っ黒なタツヒコの肌。
背中は広く、ちゃぶ台でも一般住宅ほどの大きさがあるというのにタツヒコの上半身はビルの様にそびえ立っていた。
くわえて、口回りにもワイルドな無精髭が伸び、男らしさとワイルドさが1、5倍強化されている。前から覗けば、多少腹は緩んでいるものの、胸筋はがっしりと広い肩幅に繋がっていて、太い首と相まって大変セクシーだ。
キョウイチ「まったく、心配しましたよ。なにかあったのかと…」
リク「す、すまない…まさか人間のお客さんが見えるなんて想像もしていなくて…」
後ろではキョウイチとリクが散らかった部屋を掃除している。
給水タンクほどもあるビールの缶やタツヒコが脱ぎ散らかした洗濯物を片付け、乱れた布団を戻した。キョウイチ「で、取っ組み合いの原因は?」
リク「い、いや。呼んでも出てこないから合鍵で入ったら部屋は散らかり放題だし、結局ビール飲んでやがるし…」
キョウイチ(…合鍵もってんだ…)
リク「今日は天気もいいから、その、あいつと買い物にでもと思ったんだが…あまりにだらしが無くて、つい。」
レイ(…熟年夫婦だね、これ…)
キョウイチとレイは軽く掃除すると、そのまま部屋をあとにした。
レイ「全く、あの2人は本当に仲がいいんだから…」
キョウイチ「まぁ…なんというか…リクさんもタツヒコさんもすげぇしっかりしてるのにな。」
レイ「2人きりになると、まんま子供だね…ねぇキョウイチ。」
キョウイチ「なんだ?」
レイ「このままお散歩して行こ?肩に乗っけてよ。」
キョウイチ「あ、あぁ、いいぞ。…ちょっと恥ずかしい、けどな。」
レイ「ほら、また眉間にしわ寄せてるよ。あはは」
キョウイチ「お、おぉ、すまん…はは、くすぐってぇ。」
ヨシキチ「じゃあ僕も買い物イくっす!!」
というわけで、リクはキョウイチ達に今日のお詫びとばかりに夕食に誘った。
夕方まではタツヒコとヨシキチと三人で買い物に出かける事にした。リク「お前、もう少し格好どうにか出来ないか?」
リクが指摘したのはタツヒコの格好だ。
殆ど作業着の様な格好で出て行こうとしたのでリクが呼び止める。
リクはモッズコートにワインレッドのズボンと年相応の落ち着いた格好だが、タツヒコは茶色のチノパンに黒のタンクトップと代わり映えがない。タツヒコ「うーん、普段外でねぇしなぁ」
とタツヒコさんが渋々ジーンズを押し入れから引っ張り出し、太い足を通した。
ちゃぶ台から見上げると、一回一回どすんどすんと足音を起こすタツヒコの着替えは工事現場のようだ。
タンクトップの上からシャツを着ると、休日のお父さん風の姿となった。タツヒコはちゃぶ台からタバコの箱とヨシキチをつまんだ。
タツヒコ「お前さんはこん中にいろよ?」
と優しくヨシキチを胸ポケットにいれ、頭を指で撫でてやった。
リク「ヨシキチ君、苦しかったら言えよ。」
リクが屈んでタツヒコの胸ポケットに収まったヨシキチを指で撫でてやった。
ヨシキチ「えへへ、なんか2人とも俺のお父さんみたいっすね!」
ヨシキチの無邪気な返事に、タツヒコとリクは思わず吹き出した。
そして一瞬、顔を赤らめるのであった。ヨシキチの無邪気な返事に、タツヒコとリクは思わず吹き出した。
そして一瞬、顔を赤らめるのであった。どしん、どしんと地響きを起てながらタツヒコとリクが歩いて行く。
タツヒコはくわえ煙草で、しかし胸ポケットの当たりに手をやり、ヨシキチにかからない様に細心の注意を払っている。巨人街区と人間街区の中間なので、タツヒコ達の間をバスや車がなれた様に通り抜けて行った。
ほかにも高校生の巨人が人間の高校生を掌に載せて歩いていたり、スーツ姿の巨人が滑りそうになりながら焦ってダッシュして行ったりと、
街には多くの巨人と人間が居た。(直後に「すみませーん!」と言う声と、巨人が転んだ様な巨大な地響きが聞こえてタツヒコとリクは一名の巨人を頭に思い浮かべて目を掌で覆った)
ヨシキチはタツヒコの胸ポケットからリクとタツ氷魚が短い会話を交わしたりしている所を見ていた。
見て気がついたのだが、この2人は巨人の中でも大きな方に分類されるという事だ。数人の巨巨人とすれ違ったが、特に小さな巨人はヨシキチと目が合うくらいの高さだ。
普段タツヒコばかり見上げているので気づかなかったが、タツヒコは巨人の中でも特に巨大な存在だったのだ。確かに良く考えれば他の巨人より建物を撤去したりする工事はタツヒコの方が多い。
ブーツやなんかも、他の巨人さんが「タツヒコさんのブーツはでかいからすぐ分かる」と行っていたのを思い出した。クウヤ「あ、タツヒコ先輩にリク先輩じゃないっすか!!こんにちはぁ!!!」
突然、タツヒコの背後から一人の巨人が抱き付いてきた。
タツヒコとリクが驚いて振り返ると、顔は破顔にかわった。タツヒコ「お、クウヤじゃねーか。お前さん元気だったか?」
リク「聞いたぞクウヤ君。この間の大会で見事優勝したらしいじゃないか。先輩として鼻が高いぞ。」
クウヤ「うっす!!ありがとうございます!!!」
ヨシキチ「タツヒコさん!!後輩の子っすか?」
タツヒコ「お、おぉ。俺たちの母校の空手部のクウヤってんだ。今高2…だったけな。」
クウヤはにこっと笑うと、屈んでタツヒコに指を差し出した。
ヨシキチの目の前には、クウヤの筋肉質な首筋が見えた。
首から胸や続くクウヤの身体は、シャツの下から筋肉が張り出しているのが分かるほどがっちりしていた。
坊主頭にその身体はまさに空手少年と行った風貌で、太い眉毛が意思の強さを感じさせたる。クウヤ「クウヤっす!よろしくお願いします!!」
爽やかな声に、ヨシキチも思わず笑顔になった。
クウヤの体温の高い指を掴んで握手な様な事をしていると、「おぉ、すっげぇ!!!人間だ!!!」
と、素っ頓狂な声が下から聞こえた。
[ち、ちっさいなぁ…」
次の声は、上から聞こえる。
クウヤ「あ、紹介します!こっちのでっけぇのがジュウゴで、柔道部。ちっこいのは野球部のダイゴっす!」
ダイゴ「てめぇクウヤ!!ちっこいってゆーな!まだ成長中!!」
ヨシキチがシャツから身を出すと、タツヒコやクウヤより小柄な少年…まるで犬を思わせる様な実直そうな顔をした少年がたっていた。
さらにその奥には、タツヒコよりでかいジュウゴが、優しそうな表情でたっている。クウヤ「この2人は島の高校で、人間が珍しいんすよ。」
タツヒコはヨシキチを摘むと、ダイゴの掌に載せてやった。
タツヒコ「よろしくな、ダイゴ、ジュウゴ。」
タツヒコが巨人達に囲まれて、その大きさを見る。
凡そ40mのタツヒコと42mのリク。キョウイチも40mなので、ヨシキチの知っていた巨人達はみな一般より一回り大きい。
クウヤも同じくらいでかいが、ジュウゴはそこから頭一つ飛び抜けて大きかった。
反対に、ダイゴは40mクラスの巨人に囲まれ、皆を見上げている格好だ。タツヒコの胸の高さにいた掌の上のヨシキチと、ダイゴの目線が同じ程度。
クウヤ、ジュウゴ、タツヒコ、リクとでかい巨人に囲まれ、まるで高層ビル群にぽつんと残った住宅の様だ。
決して小さくはないが、スポーツをするならもう少し上背が欲しいと言うのが本音だろう。
ダイゴは楽し気に話しているでっかい巨人を他所に、少し拗ね気味でうつむいていた。
その視点の先にはヨシキチがいた。ヨシキチ「…きにすんなよ、ダイゴ君!俺からしたら、ダイゴ君だってめっちゃデッケェから!」
ダイゴ「…そ、そっか?やっぱな!へっへー、俺もでかく見えっか…」
ダイゴは恐ろしく素早く機嫌を直した。
にこっと笑いながらダイゴもヨシキチに指を差し出した。
その指を抱える様に掴んだヨシキチを見て、ダイゴはさらに満足そうになった。ダイゴ「へへ、俺はダイゴってんだ。なぁヨシキチ。お前は身長どれくらいだ?」
ヨシキチ「俺?185cmくらいだよ。」
ダイゴ「……………それって俺たち換算で40m超えてんじゃねーーーーーかーーーーーー!!!!!!!!」
ジュウゴ「…面白い先輩達だったな。」
クウヤ「だろ?俺たちの間じゃおしどり夫婦って呼ばれてんだぜ。」
ジュウゴ「それは言えるな…………お?…ダイゴ、どうしたんだ。」
ダイゴ「…この世には神も仏もねぇ…ぐすっ」
クウヤ・ジュウゴ「???」
タツヒコ「なんかダイゴが泣きながら走り出したけどなんかあったのか?」
ヨシキチ「さぁ…わからないっす…俺変な事いったかな…」
リク「…」
←何となく察しがついたので複雑な顔で黙っている。
さて、ショッピングモールで服を見たり、本を買ったり。
タツヒコが料理本を買ったのにタツヒコはびっくりした。
リク曰く、休日はさらっとおつまみを自分でこしらえてしまうらしく、それが中々美味しいらしい。リクはと言えば、裁縫が趣味という事で糸やボタン等をでかい身体を屈めてみていたのが面白かった。
タツヒコがソフトクリームを買うと、テーブル席に座ってポケットのヨシキチを摘まみ上げてテーブルに下ろしてやった。
タツヒコ「お前さんも食うかい?」
タツヒコはスプーンですくって、ヨシキチから見たら大盛り山盛りのソフトクリームを分けてくれた。
リクは珈琲をすすりつつ、その様子をみている。
ヨシキチが顔にソフトクリームを付けながら食べている様を3人で笑いあいながら、楽しい午後は過ぎて行った。タツヒコ「おーっす、テル。邪魔するぜー。」
タツヒコが暖簾をくぐったのは居酒屋てる。
タツヒコのお気に入りの店で、料理がおいしいのと人間と巨人が一緒に御飯を食べられる居酒屋なのだ。
カウンターには鍋を震う、ふくよかで幸せそうな巨人がたっていた。テルアキ「あ、タツさんいらっしゃーい。ツレが出来上がってるよー!」
テルアキの指差す方向には、真っ赤になってすっかり出来上がった巨人タクシーのタクトが真っ赤になって両隣の巨人に抱き付いている。
清掃員のソウタが苦しそうにタクトの腕を解き、隣りには真っ赤になってほぼダウン状態の宅配員のタクマが(///×∀×///)
こんな顔になりながら泥酔していた。
タクト「あははははははwうめぇぞテルー!!!ナオー!!」
タクマ「ふにゃ〜もうらめ〜」
ソウタ「おーい、2人とも帰ってこーい…」
タツヒコは苦笑いしつつテーブルに座った。
ヨシキチの席には、人間のナオが水を持ってきてくれた。[今日のおすすめ」には大王イカのカルパッチョ、タイタン野菜サラダ、ダイダラボッチ地鶏の唐揚げ、コウダイ印のビーフシチューなど、さまざまな料理が並ぶ。
タツヒコ「…えーとじゃあ、ダイダラボッチ地鶏の唐揚げに、巨人ネギマ、コウダイ印のビーフシチューと、生。巨人用二つと、人間用一つな。」
ナオ「はーい。今日はコウダイ君家から食材いっぱい届きましたからねー。」
と、行ってるうちにキョウイチとレイも到着した。
ヨシキチとレイは、リク、タツヒコ、キョウイチの巨人に囲まれての食事だ。
三人のビルほどもある上半身を見上げる。レイは密かに、三人ともに双丘をなすムキムキな巨人達の胸筋に見とれていた。
特にタツヒコは上着を脱いだ所為で、肩のふっくらした筋肉まではっきり見て取れて、その岩山の様な巨体をレイは密かに心行くまで堪能した。レイ「いやー、でっかい巨人がそろいでいいねー。」
ヨシキチ「迫力あるっすね!!」
といってると、どしどしと料理が運ばれてきた。
ナオが巨人アイドルのマナトとリポーターのヤストが受け答えをしている番組を消すと、ソウタやタクト、タクマが集まって来る。タツヒコ「あれ、どうしたんでぇ、お前さん達。」
と、タツヒコが言うと、リクが深刻そうな溜め息をついた。
それに関してはソウタやテルアキ、キョウイチも同じ反応だった。リク「…やっぱり忘れていたか。この馬鹿が。何の為にヨシキチ君が訪ねてきたと思ってるんだ!」
キョウイチ・レイ(自分もわざわざ来た事は言わないんだね…)
タツヒコ「???なんでぇ??」
ヨシキチは席を立って、タツヒコの巨大な掌の前まで来た。
タツヒコがいつも付けている無骨な腕時計と、がっしりした焼けた掌、そして男らしく毛の生えた太い腕が目の前にある。ヨシキチ「まったくもぉ…忘れちゃダメっすよ!!タツヒコさん!!誕生日オメデトーーー!!!」
タツヒコ「…へ?」
リク「…ま、まぁ毎年の事だからな…」
キョウイチ「おめでとうございます。」
レイ「おめでとー!」
タクト「ぎゃははははwおめでとーたつさーん!!」
タクマ「ふぇぇ、おめれとー!」
ソウタ「うん、タツさん、おめでとー!」
ナオ「おめでとうございます、タツさん。」
一気に鳴り響くおめでとうコールにきょとんとするタツヒコ。
そう、今日は10月10日(と言う事にしておいてください)。タツヒコの誕生日だったのだ!テルアキ「はーい、リクさんから密かに注文受けてたケーキでーす!」
リク「あ、こらテルアキ君!!!言うんじゃない!!!」
テルアキが奥から、レイ達が家を建てられるほど巨大なケーキを運んできた。
ケーキにはひげを生やしたデフォルメしたタツヒコの絵がチョコレートで書いてあった。ごちそうとケーキ、そして皆の笑顔。
ぽかんとしていたタツヒコの顔が、温かい笑顔に変わって行く。タツヒコ「…へへ、ありがとうよ、みんな!!!」
タツヒコは嬉しそうにジョッキを持ち上げると、巨人達はみな巨大なグラスを手に、乾杯し始める。
がちんがちんと、大きな音を起てて黄色のグラスが中を舞う様は、巨大な気球が上下しているような幻想的な光景だった。
タクトが音頭をとる様に、巨人達は皆料理やグラスに目を奪われた一瞬、タツヒコはその太い腕をリクの肩に回した。
リク「なっ?!」
反射的にはなれようとするリクの肩をタツヒコの掌が押しとどめる。
目が合う2人。
リクの顔が明らかにアルコール以外の要員で真っ赤になって行く。
タツヒコは得意満面に、少しだけ目を泳がせて照れている事も分かった。タツヒコ「ったく、素直におめでとうもいえねーのかよ、俺の幼なじみ様は。
…ありがとよ、親友。」
最後の一言は、リクと、近くにいたヨシキチにしか聞こえない声でタツヒコがささやいた。
リクも少し照れながら「おぅ…」
と応酬して、その太い腕を肩から剥がした。
リク「ったく…ヨシキチ君、この事は内緒にしてくれよ…」
リクの照れた笑顔に、ヨシキチもタツヒコも笑った。
そのあと、おそくまでパーティは続き、タツヒコもリクもヨシキチも笑いあった。料理で、運送で、送迎で、清掃で、インストラクターで、防衛で、そして、人間と巨人が一緒になれる建築を通して、
巨人と人間が関わってきた街で、タツヒコの楽しい1日はくれて行くのだった。「おしまい!」
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