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第一部:タカシ編
第一章:縮小の目覚め
タカシは19歳の大学生だった。身長178センチ、整った顔立ちに引き締まった体躯。高校時代はバスケ部で活躍し、大学では友人に囲まれ、恋愛の噂も絶えない日々を送っていた。誰もが認める好青年――それが、縮小病に襲われる前のタカシの姿だ。鏡に映る自分を見て、ささやかな自信を感じていたあの朝までは。
発症は突然だった。ある夜、タカシは寝苦しさを感じて目を覚ました。体が熱く、汗が止まらない。最初は風邪かと思ったが、次第に異変に気づいた。ベッドが妙に広く感じられ、枕が巨大な丘のようにそびえている。混乱の中、手を伸ばしてスマートフォンを掴もうとしたが、その重さに腕が震えた。画面を見下ろすと、自分の指が信じられないほど小さくなっている。心臓が跳ね上がり、叫ぼうとした瞬間、声は甲高い蚊の羽音のようになって喉に消えた。鏡に駆け寄る――いや、這うようにしてたどり着いた――その時、タカシは現実を悟った。身長は5センチメートル。かつての自分は、もういない。
部屋の中は一変していた。机は遥か彼方の山脈となり、床に落ちた靴下は広大な布の平原だ。埃の粒さえ、タカシの膝ほどの高さに見える。窓から差し込む朝陽は、巨大な光の壁となって彼を圧倒した。パニックに襲われながら、タカシはベッドの端まで這い進み、助けを求めて叫んだ。「誰か! 助けて!」 だが、その声は小さすぎて、部屋の空気に溶けるだけだった。どれほど叫んでも、かつての仲間や家族に届くはずがない。タカシは、自分の存在が消え去ったような感覚に震えた。
やがて、ドアが開く音がした。地響きのような足音とともに、兄のユウトが部屋に入ってきた。21歳のユウトは、タカシよりがっしりした体格で、普段は無愛想だが頼りになる存在だった。だが、この朝、ユウトの姿はタカシにとって別物だった。足音が床を震わせ、ジーンズの裾が巨大な幕のように揺れる。ユウトが近づくたび、タカシの小さな体は恐怖で硬直した。「タカシ、起きろよ」と低く響く声が、空気を振動させて耳に突き刺さる。ユウトがベッドに腰を下ろすと、マットレスが傾き、タカシは転がり落ちそうになった。
「何だこれ……タカシ?」 ユウトの目が、タカシの小さな体を捉えた。その瞬間、タカシは兄の視線に異様なものを感じた。驚きと混乱が、やがて好奇心に変わり、さらに何か暗い欲望が混じる。ユウトの手がゆっくりと伸びてきた。巨大な掌が空を覆い、指先がタカシを包み込むように近づく。「お前、こんな小さくなって……」 ユウトの声には、笑いと興奮が滲んでいた。タカシは逃げようとしたが、足がもつれて転倒する。次の瞬間、兄の指が彼を軽々と掴み上げた。皮膚の熱と汗の匂いがタカシを包み、指の力で肋骨が軋んだ。「すげえな、本当に小さくなったんだ」 ユウトの口元に浮かぶ笑みは、かつての兄のものではなかった。
タカシにとって、縮小病の発症は世界の終わりだった。巨大な家具、届かないドアノブ、這うしかない床――すべてが彼を嘲笑うかのようだ。そして、ユウトの視線と手。その日から、タカシの人生は、自分の体を支配する巨人たちの欲望に翻弄される日々の始まりとなった。縮小した美貌は、彼を救うどころか、さらなる闇へと引きずり込む呪いだった。
第二章:家庭の崩壊
縮小病の発症から数日、タカシの生活は一変していた。部屋の隅に置かれた小さなプラスチックケースが、彼の新しい「住処」だ。蓋には空気穴が開けられ、中には綿と水を入れたキャップが置かれている。まるでペットのハムスターのような扱いだが、タカシにはそれが現実だった。家族は彼を「保護」すると言いながら、巨大な世界での生活を強いた。だが、その保護は名ばかりで、タカシにとって家庭は安全な場所ではなくなっていた。
ズシン…ズシン…。朝が来るたび、兄ユウトの足音がタカシを目覚めさせる。床を震わせる重い地響きが近づくと、ケースの中の小さな体は恐怖で縮こまる。まるで大地が揺れるような振動が、タカシの心臓を締めつけた。蓋が開き、ユウトの顔が空を埋める。「おはよう、タカシ。よく眠れたか?」 低く太い声が頭上から降り注ぎ、タカシの耳を圧迫する。ユウトの手が伸びてくると、その指先はタカシにとって巨大な柱だ。汗とタバコの匂いが混じった熱気が彼を包み、指が軽くタカシを摘まみ上げる。抵抗しても無駄だ。ユウトの力は絶対的で、タカシは掌の中でじたばたするしかない。
「お前、ほんと小さくて可愛いな」 ユウトの口調には、かつての兄妹のような親しみはなく、代わりに妙な熱がこもっていた。彼はタカシを指先で転がし、その無力な姿を眺めて笑う。時には、掌に載せたままソファに寝そべり、タカシが這って逃げようとするのを楽しそうに見つめた。「どこ行くんだよ。そんな足じゃ俺に追いつけねえぞ」 ユウトの足が床に下ろされると、その衝撃でタカシは転倒する。巨大なスニーカーがそばに置かれ、ゴムと汗の臭いが鼻をついた。ユウトにとって、これはゲームだった。だが、タカシには恐怖と屈辱の連続だ。そして、ある夜、ユウトの手がさらに大胆になった。タカシを掴み、自分の胸に押し当て、筋肉の硬さと心臓の鼓動を感じさせる。「お前、こんな近くで見るとやっぱイケメンだな」 ユウトの吐息が熱風となってタカシを襲い、その声には隠し切れない欲望が滲んでいた。
父親のマサルもまた、タカシに対する態度を変えた。45歳のマサルは、がっしりした体格と厳格な性格で、かつてはタカシの尊敬の対象だった。だが、縮小した息子を見たマサルの目は冷たく、どこか不気味だった。ある夕食時、マサルはビールを飲みながらタカシのケースをテーブルに置いた。グラスを叩く音がタカシの体を震わせ、ビールの泡がこぼれるたび、巨大な飛沫が彼を脅かす。「タカシ、お前今いくらくらいするんだろうな」 マサルの声は低く、冗談とも本気ともつかない響きがあった。彼はタカシを指でつつき、その小さな体がよろけるのを見て笑った。「昔はお前を誇りに思ってたが、今じゃこんなもんか。世話するのも金がかかるしな」 その言葉に、タカシは凍りついた。マサルの視線には、息子への愛情ではなく、価値を量るような冷酷さが宿っていた。
マサルの態度は、日を追うごとに露骨になった。ある晩、タカシをケースから取り出し、掌に載せてじっくり観察した。「顔はいいし、体も悪くねえ。市場なら高く売れるだろうな」 マサルの指がタカシの体をなぞり、その感触を楽しむように動く。タカシは逃げようとしたが、マサルのもう一方の手が壁となって行く手を阻んだ。「暴れるなよ。俺はお前をどうするか考えてんだ」 マサルの声には、父親としての威厳はなく、ただ欲望と打算が渦巻いていた。タカシにとって、父の手はかつての安心ではなく、捕食者の爪と化していた。
家庭は、タカシにとって監獄となった。ユウトの遊び半分の搾取と、マサルの冷酷な計算が、彼を追い詰める。巨大な足音、圧倒的な手の力、低く響く笑い声――すべてがタカシを支配し、彼の美貌は家族すら惹きつける呪いだった。縮小した日から、タカシの人生は、自分の体を求める巨人たちの掌の中で翻弄される運命に落ちていた。
第三章:大学の終焉
縮小病が世界に広がり始めた頃、社会はまだその影響を完全には理解していなかった。発症者たちが「通常の生活」に戻れる可能性を信じ、医療機関や政府は試行錯誤を重ねていた。タカシが縮小した当時も、大学側は患者の登校を認め、特別な支援策を講じていた。小さな体での生活は困難を極めたが、キャンパスには車椅子サイズの移動用カプセルや、授業用の拡大マイクが用意され、患者が孤立しないよう配慮されていた。だが、タカシにとって大学への登校は、支援策以上に別の意味を持っていた。家庭での兄ユウトの執拗な搾取と、父マサルの冷酷な視線から逃げ、かつての仲間たちに会うことで、自分がまだ「人間」だと感じたかったのだ。
登校初日、タカシは小さなカプセルに入れられ、ユウトに無理やり大学まで運ばれた。「お前、こんなとこ行って何になるんだよ」とユウトは笑ったが、タカシの懇願に根負けした形だった。キャンパスの門をくぐると、タカシの心は一瞬軽くなった。芝生の匂い、学生たちのざわめき、遠くで鳴る講義のチャイム――すべてが懐かしく、彼に希望を与えた。カプセル越しに見える世界は巨大だったが、親しい同級生の顔を見れば、きっと昔の自分に戻れる。そう信じていた。
最初に会ったのは、同級生のケイタだった。バスケ部で一緒に汗を流した仲間で、タカシの陽気な性格を慕っていた。ケイタがカプセルに近づくと、その足音が地面を震わせ、タカシの体に響いた。「タカシ、マジかよ……お前こんな小さくなって」 ケイタの声は驚きに満ちていたが、すぐに笑顔に変わった。彼はカプセルを開け、タカシを掌に載せた。巨大な手がタカシを包み、汗と体温が彼を圧倒する。「すげえな、こんな小さくてもお前って分かるわ。顔、変わんねえな」 ケイタの言葉は優しかった。だが、その視線にタカシは違和感を覚えた。ケイタの目は、タカシの小さな体をじっと見つめ、好奇心と何か別の感情が混じっていた。
講義中、タカシは拡大マイクを使い、教授の質問に答えた。声は小さく震えたが、クラスメイトたちは拍手で迎えた。だが、その温かさは長く続かなかった。休み時間になると、同級生たちがカプセルを取り囲んだ。「タカシ、見せてくれよ」「どれくらい小さいんだ?」 彼らの声には、友情よりも好奇心が勝っていた。ある者はタカシを指でつつき、ある者は笑いながら彼を宙に持ち上げた。「軽っ! これじゃボールみたいだな」 タカシは抵抗したが、5センチの体では何もできない。巨大な顔が迫り、息が彼を吹き飛ばしそうになるたび、タカシの希望は削がれていった。
さらに悪いことに、先輩のヒロキが現れた。体育会系の3年生で、タカシが入部した時から目をかけていた男だ。筋肉質な体と自信に満ちた態度は、かつてタカシにとって憧れだった。ヒロキはタカシを手に取ると、低い声で笑った。「お前、こんなになってまで来るなんて気合い入ってんな」 彼の指がタカシを締めつけ、息が詰まるほどの力で握られた。「でもさ、こんな小さくて可愛いんじゃ、バスケどころか俺のポケットに入っちまうぜ」 ヒロキの笑い声が空気を震わせ、タカシの耳に突き刺さる。その手がタカシを胸に押し当て、筋肉の硬さと汗の匂いが彼を包んだ。「なぁ、タカシ。お前、俺にこんな気分にさせるなんて悪い奴だな」 ヒロキの声には、欲望がはっきりと滲んでいた。
その日から、タカシの大学生活は地獄と化した。同級生たちは彼を玩具のように扱い、講義の合間に掌で弄ぶようになった。ケイタでさえ、タカシを手に持つたび、その無力さに興奮を隠さなくなった。先輩たちはさらに露骨で、ヒロキを中心にタカシを「部室のマスコット」と呼び、筋肉質な体を見せつけながら彼を弄んだ。タカシの整った容姿は、彼らを引き寄せる磁石となり、その小さな体は欲望の標的でしかなかった。登校は、家庭からの逃げ場ではなく、新たな監獄への入り口だった。
タカシの希望は裏切られた。縮小病が奪ったのは身長だけではなく、彼が信じていた人間関係のすべてだった。大学は、巨大な男たちに支配されたもう一つの檻となり、タカシをさらに深い闇へと突き落とした。
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第四章:保護の仮面
タカシが保護施設に送られたのは、大学での生活が限界に達した頃だった。家庭でのユウトの執拗な弄びと、マサルの打算的な視線、大学での同級生や先輩たちの玩具扱い――どれも耐え難かったが、タカシにはまだ「保護」という言葉に希望が残っていた。縮小病患者を支援し、治療法を探るための政府施設。そこなら、巨大な男たちの欲望から逃れ、安全が得られるかもしれない。そう信じて、タカシは自ら施設行きを志願した。マサルは「これで世話が減る」と冷たく笑い、ユウトは「つまんねえな」と肩をすくめたが、タカシにはどうでもよかった。新しい場所での再起を夢見て、彼は小さなカプセルに入れられ、施設へと運ばれた。
到着した施設は、巨大なコンクリートの建物だった。タカシの視点からは、果てしない灰色の壁が空を覆い、鉄製の門が轟音を立てて閉まる。職員がカプセルを受け取り、タカシは「居住区」と呼ばれるエリアに運ばれた。そこは、数百人の縮小病患者が暮らす巨大な倉庫のような空間だ。天井は遥か彼方、床には無数の小さな檻が並び、各檻には5センチの患者が詰め込まれている。空気は埃と汗の臭いで淀み、遠くで響く患者たちの小さな叫び声が不気味な音色を奏でていた。タカシは自分の檻に放り込まれ、鉄格子越しに外を見た。そこに広がるのは、希望ではなく、監獄だった。
職員たちは、屈強な20代から30代の男たちだった。制服に身を包み、厳格な態度で患者を「管理」する。だが、その管理は表向きに過ぎなかった。初日、タカシは職員の一人、ゴウに目を付けられた。筋肉質な体と鋭い目つきの男だ。ゴウが檻に近づくと、その足音が床を震わせ、タカシの小さな体に響いた。「お前、新入りか。顔がいいな」 ゴウの声は低く、笑いを含んでいた。彼は檻を開け、タカシを指で摘まみ上げた。巨大な手がタカシを包み、指の圧力で肋骨が軋む。「ここじゃ俺たちがルールだ。分かったな?」 ゴウの吐息が熱風となってタカシを襲い、汗とタバコの臭いが鼻をついた。彼はタカシを掌に転がし、その無力な姿を楽しむように見つめた。
施設での搾取は、家庭や大学とは比べものにならないほど組織的だった。夜になると、職員たちは「点検」と称して檻を回り、気に入った患者を手に取る。タカシが見た最初の夜、ある患者が職員に連れ出された。5センチの小さな体が、巨大な掌に握られ、抵抗する声が遠ざかる。戻ってきた時、その患者は動かなくなっていた。職員は無言で檻に戻し、次のターゲットを探した。タカシは震えながら悟った。家庭でのユウトの遊びも、大学でのヒロキの弄びも、単なる戯れだった。ここでは、患者は命すら奪われる道具に過ぎない。
ゴウの行為はさらに過激だった。ある日、タカシを手に持ったまま、職員室に連れ込んだ。そこでは他の職員たちが酒を飲み、患者たちを玩具にして笑い合っていた。ゴウはタカシを机に置き、巨大な指で彼を押さえつけた。「こいつ、高値がつきそうだな。顔も体も上物だ」 他の職員が近づき、タカシを値踏みするように見つめる。「市場に出す前に俺らが楽しんでもいいだろ」と誰かが笑い、タカシは巨大な手から手へと渡された。指が体を這い、息が彼を吹き飛ばしそうになる。抵抗するたび、職員たちの笑い声が大きくなった。「暴れるなよ。お前らの命は俺らが握ってんだ」 ゴウの言葉が、タカシの心を砕いた。
施設での日々は、タカシにとって絶望の連鎖だった。保護という仮面の下で、職員たちは患者を性的に搾取し、命すら奪う。タカシの容姿はここでも呪いとなり、ゴウをはじめとする職員たちの欲望を掻き立てた。これまでの仕打ちが戯れに思えるほど、闇は深く、タカシを飲み込んでいった。やがて、施設の予算削減が決まり、職員たちは患者を闇市場に売り払う計画を立て始めた。タカシの未来は、さらに暗い影に覆われようとしていた。
第五章:闇市場の掌
保護施設の職員たちが予算削減を理由に患者を売り払う計画を立てた時、タカシは高値の「商品」として選ばれた。顔立ちの良さと引き締まった小さな体が、闇市場のブローカーの目に留まったのだ。檻から引きずり出され、プラスチックの容器に詰め込まれたタカシは、暗いトラックの荷台で揺られながら取引所へと運ばれた。そこは、巨大な男たちが小さな檻を値踏みする異様な空間だった。タカシを買い取ったのは、30代半ばの男、ダイゴだった。筋肉質な体と鋭い目つき、自信に満ちた笑みが特徴の男だ。タカシにとって、彼は新たな巨人であり、逃れられない悪夢の始まりだった。
ダイゴの手が初めてタカシを掴んだ時、その力に骨が軋んだ。巨大な指が小さな体を包み、汗とコロンの匂いが鼻をつく。「お前、高かったんだぞ。期待してるからな」 ダイゴの声は低く響き、タカシの耳を圧迫した。彼はタカシを掌に載せ、じっくりと観察する。指先で体をなぞり、抵抗するタカシを笑いものにした。「暴れても無駄だ。俺の手の中じゃお前はただの虫だ」 その日から、タカシはダイゴの欲望の道具となった。
虐待は多岐にわたった。ある夜、ダイゴはタカシを床に置き、巨大な足を頭上にかざした。スニーカーの底が空を覆い、ゴムの臭いが降り注ぐ。「踏み潰してやろうか?」 ダイゴの笑い声が地響きのように響き、足が近づくたび、タカシは死を覚悟した。結局、踏まれることはなかったが、その恐怖はタカシの心に刻まれた。またある時は、タカシを掌に載せたまま、ダイゴが筋トレを始めた。汗に濡れた胸に押しつけられ、硬い筋肉と鼓動がタカシを圧倒する。「お前、俺の力感じろよ」 ダイゴの興奮した息が熱風となり、タカシを吹き飛ばしそうになった。
性的な搾取も過激だった。ダイゴはタカシを指で弄び、その小さな体を自分の体に擦りつけた。巨大な皮膚の熱と摩擦に、タカシは耐えるしかなかった。「お前、こんな小さくてもちゃんと反応するんだな」 ダイゴの声には悍ましい喜びが滲み、タカシの美貌が彼の欲望をさらに煽った。時には、タカシをガラス瓶に閉じ込め、息が詰まる中で観察する。瓶の壁越しにダイゴの巨大な目がタカシを見つめ、その視線に逃げ場はなかった。ある晩、酔ったダイゴはタカシを口に含み、舌で転がした。歯の間を這う恐怖と唾液の熱に、タカシは気を失いかけた。
闇市場に売られてからの日々は、絶望の連鎖だった。家庭でのユウトの遊び、大学でのヒロキの弄び、施設でのゴウの搾取――それらさえも、この巨人の前では薄っぺらい記憶に感じられた。ダイゴの手の中で、タカシは自分の存在を疑問視した。なぜ生きているのか。死ねば楽になれるのに、なぜまだ息をしているのか。
タカシの心は暗い淵に沈んでいた。生きていることは、救いでも希望でもない。ただ、ダイゴの欲望を満たすための道具として機能しているだけだ。美貌は呪いとなり、小さな体は巨人の玩具として消費される運命だった。タカシは考える。自分が生き延びているのは、罰なのか、それともこの世界が彼に与えた最後の嘲笑なのか。答えは見つからない。あるのは 、巨大な掌の中で続く、果てしない闇だけだった。
第六章:飽きられた果て
俺の縮小病が始まってから、どれくらい経っただろう。5センチの体でダイゴの掌に閉じ込められ、弄ばれる日々は地獄だった。だが、その夜、ダイゴの態度がいつもと違った。酒臭い息が熱風となって俺を包み、彼の目がぼんやりしてる。リビングのテーブルに座り、俺を掌に乗せたまま、ビールの缶をがぶがぶ飲んでいる。「お前、もっと俺を楽しませろよ」と呟きながら、指で俺を惰性で転がす。動きは荒っぽく、興味が薄れているのが分かる。酔っているせいだ。
突然、ダイゴの手が揺れ、俺が掌から滑り落ちる。「うわぁっ!」と叫ぶが、声は小さすぎて届かない。床に叩きつけられ、硬いフローリングの衝撃で転がる。目の前に、ダイゴの巨大な裸足が迫ってくる。熱気が漂い、影が俺を覆う。足裏が空を塞ぎ、圧迫感だけで息が詰まりそうになる。俺は這って逃げようとするが、足が一歩動くだけで追いつかれる。「うわっ!」と叫んだ瞬間、ダイゴがバランスを崩し、足が俺の横にドスンと落ちる。衝撃で俺は跳ね上がり、埃にまみれる。
「お前、落ちるなよ…って、もういいか。飽きたな、お前」 ダイゴの声が低く響く。酔った目が俺を見下ろし、冷たい笑みが浮かぶ。「最初は面白かったけどさ、毎日同じじゃつまんねえよ」 彼は立ち上がり、俺を床に放置したままソファに倒れ込む。「市場に返すか。もう癒しになんねえ」 そう呟き、眠りに落ちる。俺は震えながら這うしかできない。巨大な足が迫った恐怖、圧倒的な影、逃げられない現実――それが俺の居場所だ。ダイゴに飽きられた瞬間、俺はただのゴミになった。
翌日、俺は闇市場に戻された。埃っぽい倉庫の檻に詰められ、ブローカーの冷たい目に晒される。「こいつ、使い込まれているが、まだいけるな」と低い声が響く。ブローカーが俺を値踏みする。すぐに客が集まり始めた。巨人の顔が空を埋め尽くし、低い笑い声が雷のように轟く。俺は檻の中で縮こまり、囲まれる恐怖に震える。
「おい、こいつ、俺の手でどれだけ叫ぶかな?」 一人目の客が笑い、指を近づけてくる。筋肉質な腕が鉄塔のようだ。「小さくて柔らかい体、舐め回したらすぐ壊れそうだな」 二人目が舌なめずりし、熱い息が俺を襲う。「踏み潰す瞬間が見たいぜ。悲鳴が楽しみだ」 三人目が足を踏み下ろし、床が揺れる。巨人たちによる耳を覆いたくなるような性的欲求が畳み掛けるように耳に届き、俺の心が凍る。人間だった頃なら想像もつかない言葉だ。だが、今の俺はただの商品。巨人の欲望の標的でしかない。
その時、一人の男が群れをかき分けて前に出た。30代半ば、メガネをかけた大柄の男だ。筋肉質ではないが、がっしりした体格が威圧感を放つ。「お前、俺の好みにぴったりだ」 低い声で呟き、巨大な指が俺を摘まみ上げる。俺の体が宙に浮き、男の熱い息が顔を包む。メガネの奥で興奮に輝く目が俺を見つめ、「お前は俺の手の中でずっと愛でてやるよ」と囁く。巨大な掌が俺を包み、指が軽く締まる。一晩中弄ばれる予感に、俺の心が震える。市場の闇が俺を飲み込む。この男の手の中で、俺の運命はさらに暗い場所へ落ちていくのだろう。
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